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村木与四郎の映画美術 [聞き書き]黒澤映画のデザイン

丹野達弥編/A5判/290ページ/2500円+税/
ISBN 978-4-8459-9885-2

黒澤映画に終始貢献した美術デザイナーが明かす黒澤的映像美の秘密。 巨匠の厳しいイメージに応える映画美術の極意がいっぱい!

■ 目 次 ■

美術助手駆け出し時代
助手として主にやったのは建物の“汚し”、リアリズムが基本だから、細かく手作業で汚していく。


「酔いどれ天使」
白黒画面でドブ池の汚さを出すのは難しい。普通のスモークを水に入れてもダメ。たまたま黄色のスモークを使ったら狙いどおりにいった。


「野良犬」
カミサンと二人で写真を撮ったり、スケッチをしながら東京を歩く。変わっていく街を記憶に残したいという想いがあった。


「生きる」
車のボデイにネオンが映る。アメリカの監督もいろいろ試したそうだけど、普通の街を車で走ったって、ああは撮れません。


「七人の侍」
木目が浮き出て黒光りしている。これこそ黒澤組十八番の”焼き板”。美術部のみならず監督が率先し、スタッフ全員で板を磨く。


「生きものの記録」
望遠レンズをタテ位置で使うから、ステージの対角線に長い廊下を作った。向こうの端にいると、人が豆粒みたいに見える。


「蜘蛛築城」
火山灰の黒い大地と白い霧の中に、真っ黒い城がヌーッと存在し、そこへ小さい騎馬武者が行く……水墨画のタッチを狙ったわけ。


「どん底」
棟割長屋の陳を外し、押入れの襖をとって、二段ベッドみたいにしている。果たして、こんなものが江戸にあったかどうか。


「隠し砦の三悪人」
反乱が起こる広大な地下牢、階段……向こうに見える焼け落ちた城。わずか三、四分のシークェンスなのにセットで贅沢に作っている。


「悪い奴ほどよく眠る」
ライトの光量がすごいから、本物の美術品なんかとても置けない。だから本物らしくと注文はくるけれど、本物を使えとは言われない。


「用心棒」
奥の路地の先にも芝居と関係のない建物があり、窓からチラッと写るだけのところも手抜きせずに作り込むから、街全体が活きて見えるんだ。


「椿三十郎」
白黒画面でそこに“赤”を感じさせるには、どうずればよいか?いろいろ実験をして、白い椿の花を真っ黒に塗ったんです。


「天国と地獄」
まったく同じ室内セットを、横浜の丘の上とスタジオとに二つ建てた。光線のトーンを合わせたり、夜景を作ったり、ここが一番苦労した。


「赤ひげ」
「人間の一生で臨終ほど荘厳なものはない」と赤ひげが言う。その感じを出したい。あの部屋はレフ板のように作って銀色なんです。


「どですかでん」
ゴミの山の中から現地調達した廃材に好き勝手に色を塗って、セットができちゃう。監督もすごく乗って、セットに色を塗って歩いていた。


「影武者」
気合が入りました。五カ月がかりで建てた御殿場のオープンは千五百坪。でも、黒澤さんは「もっと大きけりゃ良かった」だって。


「乱」
一の城の石垣は堅固で整然としたイメージ。二の城は石の表面を荒削りして、本城より“格下”の感じ。加えて、次郎の猛々しい性格とも合っている。


「夢」
トタンに色をつけてボンドを塗り、そこヘライトをあてて雪山に見せた。山のてっぺんを見せたりしない……全部見せないのが秘訣です。


「八月の◎狂詩曲★ラプソディー☆」
八十五歳の女優と八十歳の監督がガンガンやり合って、その結果、動きのジャマになる大黒柱を切れって言う。つくづく芸術は大変です。


「まあだだよ」
焼け跡のセットで揉めた。黒澤さんのイメージは「関東大震災」だし、ぼくのイメージは「東京大空襲」なんだ。


よき同伴者・村木忍の仕事
派手にしたり、わざと嘘っぽくしたり、ストーリーの邪魔になるようなセットを組んだりする傾向が強かったですね。


村木与四郎・映画美術フィルモグラフィー