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« 相対性コム デ ギャルソン論なぜ私たちはコム デ ギャルソンを語るのか | メイン | 2012.11.22 Thu »

FILM ART 通信
オーディエンス革命



No.8 観客の新感覚
津田広志


「観客の新感覚」。
なんだか舌を噛みそうな言葉だが、大切な感覚ではないだろうか。
アーティストだけが時代の新感覚をもっているわけではない。リスナーも読者も新感覚を常にもっている。

2012年10月27日から、2013年2月3日まで、東京都現代美術館で「アートと音楽」展が開催される。
ここでは、「共感覚」という新感覚、音を見る、アートを聴くという感覚の変容が主題とされている。

実際、この展示のインスタレーションと音の世界に踏み込むと、主題よりもっと深いインパクトが隠されているのがわかる。本展総合アドヴァイサーの坂本龍一は、「私たちは,現代アートを外界そして自然にさらさなくてはならない」という。この「さらし」とは何だろうか。

大友良英リミテッド・アンサンブルズの『without records』の世界に入ると、それが痛いほど感覚で分かる。特に驚きがあるわけではない。古びた無数のポータブルプレイヤーの「森」がある。近づくと偶然、不規則に鳴る音、カオス、予測のつかない音の連動の世界が続く。「森」を歩行しなくてはその「音」は聴こえてこない。

つまりこれは音を聴くという試作ではなく、「体ごと踏み込んで理解する世界」なのだ。
全身の感覚が開いてくる。

この展示で行なわれていることは、技法や音楽史、美術史以上に「世界体験」だということ。それが「さらし」ということの意味ではないか。

われわれは自然に対して勝者ではない。わたしたちは世界で迷う、漂流し、そしてかろうじて希望を見いだす。

フィルムアート社では、この展示の公式カタログを編集した。一番読者に届けたいのは、偶然が時に人を死に至らしめ、時に生を守ってくれるという世界体験ではないだろうか。

多くの観客が自宅に帰ったときに、耳や目の変容をきたすだろう。感覚が広がるということは、自分が広がるというより、世界が自分の中に入ってきて広がらせるのである。私も自宅に帰り、キザにいうわけではないが、クラシックのピアノ曲を聴いたが、調性音楽が、バラバラに解体され広々と聴こえて心地よかった。

この展示には、パウル・クレーの絵が展示されている。クレーは「共感覚」を提示した作家であると紹介されている。クレーは同時に今日のアウトサイダーアートの先駆けを作った作家でもある。21世紀はクレーの宇宙から再出発する、そんな予感を感じさせてくれる。

いかに読者が感覚を覚醒するか。わたしたちのチャレンジは続いている。




■推薦図書

        

・『アートと音楽 新たな共感覚をもとめて』
(東京都現代美術館 監修、坂本龍一 総合アドヴァイザー、フィルムアート社)
「見ること」と「聴くこと」が交差する未来の感覚へ誘う。その実践と理論。


・『サウンドアート 音楽の向こう側、耳と目の間』
(アラン・リクト 著、ジム・オルーク まえがき、フィルムアート社)
サウンドアートの歴史と発展、新たな展望を示す、サウンドアート研究の決定版。


・『アメリカ実験音楽は民族音楽だった』(柿沼敏江著、フィルムアート社)
ホーボー(移民労働者)、女性作曲家、ヴィルトゥオーソ、ピアニストなど、誰も知らなかったソングキャチャー(歌追い人)の旅。




■関連リンク、参照元など

東京都現代美術館「アートと音楽」展
http://www.mot-art-museum.jp/music/


ジュリー・アン・スタンザックのダンスワークショップ
http://www.a-m-u.jp/event/2012/10/julieannestanzak.html