どこかで叫びが

ニュー・ブラック・ホラー作品集

ジョーダン・ピール=編
ハーン小路恭子=監訳
今井亮一/押野素子/柴田元幸/坪野圭介/福間恵=訳
発売日
2025年9月26日
予価
4,800円+税
判型
A5判・上製
頁数
528頁(予定)
ISBN
978-4-8459-2505-6
Cコード
C0097
原題
Out There Screaming: An Anthology of New Black Horror

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恐怖が、再定義される──
『ゲット・アウト』の監督・ジョーダン・ピールが送る
黒人作家たちによる恐怖の最前線

【ローカス賞、ブラム・ストーカー賞、英国幻想文学大賞受賞/世界幻想文学大賞最終候補作】

『ゲット・アウト』『アス』『NOPE/ノープ』で世界に衝撃を与えた映画監督・脚本家ジョーダン・ピールが編集を手がける、全編書き下ろしによるブラック・ホラー短篇集。

本アンソロジーに収録された19の作品では、奴隷制度の記憶、公民権運動のトラウマ、移民としての分断されたアイデンティティ、そして現代社会の見えざる暴力など、超自然の恐怖だけでなく、アメリカ社会に深く根を下ろした不正義や歴史的暴力といった“現実”の〈悪夢〉が描かれる。

作家陣には、N・K・ジェミシン、ンネディ・オコラフォー、レベッカ・ローンホース、タナナリーヴ・ドゥーら国際的に高く評価される作家たちが名を連ね、新進気鋭の書き手も多数参加。また、ジョーダン・ピール自身による序文も収録されている。

ローカス賞、ブラム・ストーカー賞、英国幻想文学大賞を受賞したほか、EsquireCrimeReads、シカゴ公共図書館の「年間ベストブック」にも選出された。
また、英・ガーディアン紙は「今年最高のアンソロジーであるだけでなく、時代を超えて語り継がれる一冊」と絶賛している。

ブラック・ホラーの最前線を記録する、必読のアンソロジー。
あなたがまだ見ぬ恐怖が、ここにある──

 

私はホラーを、エンターテイメントを通じた浄化カタルシスだと考えている。それは自らの深奥にある痛みや恐怖と付き合うための方法なのだ――だが黒人にとってそれはおいそれとできることではないし、過去数十年遡っても、不可能だった。そもそも、物語が語られること自体がなかったからだ。
この小説集には19人の才気溢れる黒人作家たちが集い、それぞれの「沈んだ地」と秘密地下牢を披露してくれている。この作家たちの隣に名を連ねることはこの上なく光栄であり、誇りでもある。物語の形はさまざまだ──悪魔との舞踏に、もうひとつの現実をめぐるファンタジー、本物の、そして架空の怪物たち。それらは我々の心の内奥にある恐怖と欲望を生々しく映し出す想像の産物だ。そしてそれらは、忘れ去られることはない。
──ジョーダン・ピール「序文」より抜粋

 


収録作家

エリン・E・アダムズ(Erin E. Adams)
ヴァイオレット・アレン(Violet Allen)
レズリー・ンネカ・アリマー(Lesley Nneka Arimah)
モーリス・ブローダス(Maurice Broaddus)
チェシャ・バーク(Chesya Burke)
P・ジェリ・クラーク(P. Djèlí Clark)
エズラ・クレイタン・ダニエルズ(Ezra Claytan Daniels)
タナナリーヴ・ドゥー(Tananarive Due)
ナロ・ホプキンソン(Nalo Hopkinson)
N・K・ジェミシン(N. K. Jemisin)
ジャスティン・C・キー(Justin C. Key)
L・D・ルイス(L. D. Lewis)
ンネディ・オコラフォー(Nnedi Okorafor)
トチ・オニェブチ(Tochi Onyebuchi)
レベッカ・ローンホース(Rebecca Roanhorse)
ニコール・D・スコニアーズ(Nicole D. Sconiers)
リオン・アミルカー・スコット(Rion Amilcar Scott)
テレンス・テイラー(Terence Taylor)
キャドウェル・ターンブル(Cadwell Turnbull)


プロフィール

[監訳]
ハーン小路恭子(はーんしょうじ・きょうこ)

専修大学教授。著書に『アメリカン・クライシス──危機の時代の物語のかたち』、ホラー関連の論考に「「黒の恐怖」を奪回せよ──黒人ホラー映画史における創造的プロセスをめぐって」(杉野健太郎編『映画史の論点──映画の〈内〉と〈外〉をめぐって』所収)がある。訳書にローレン・バーラント『残酷な楽観性』(岸まどかとの共訳・近刊予定)など。

[訳]
今井亮一(いまい・りょういち)

1987年生まれ。立正大学講師。著書に『路地と世界──世界文学論から読む中上健次』、『スローでディープな英文精読──〈ことば〉を極限まで読み解く』(共著)など。訳書に『スヌーピーがいたアメリカ──『ピーナッツ』で読みとく現代史』、『数の値打ち──グローバル情報化時代に日本文学を読む』(共訳)など。

押野素子(おしの・もとこ)
平日は米法律事務所に勤務するパラリーガル、夜間および週末は黒人文化・歴史に関する書籍を日本に紹介するストリート系野良翻訳者として活動。訳書に『アフロフューチャリズム』、『評伝モハメド・アリ』、『ヒップホップ・ジェネレーション』、『フライデー・ブラック』など。ワシントンD.C.近郊在住。

柴田元幸(しばた・もとゆき)
1954年生まれ。米文学者、東京大学名誉教授、翻訳家。アメリカ現代文学中心に訳書多数。著書に『アメリカン・ナルシス』、訳書にジョナサン・スウィフト『ガリバー旅行記』、マーク・トウェイン『ハックルベリー・フィンの冒けん』、エリック・マコーマック『雲』など。文芸誌『MONKEY』日本語版責任編集、英語版編集。

坪野圭介(つぼの・けいすけ)
1984年生まれ。東京大学大学院人文社会系研究科博士課程修了。博士(文学)。成城大学准教授。専門はアメリカの文学と文化。訳書にエミリー・アプター『翻訳地帯』(共訳)、ベン・ブラット『数字が明かす小説の秘密──スティーヴン・キング、J・K・ローリングからナボコフまで』、チップ・キッド『判断のデザイン』、パトリシア・ハイスミス『サスペンス小説の書き方』(共訳)など。

福間 恵(ふくま・めぐみ)
現在、東京大学文学部大江健三郎文庫勤務。訳書にアンドレイ・クルコフ『侵略日記』『戦争日記』(近刊予定)、デイヴィッド・ダムロッシュ『ハーバード大学ダムロッシュ教授の世界文学講義』(共訳)、マイケル・バード、オーランド・バード『作家たちの手紙』(共訳)など。