イラストで出会う 女性たちのいる美術史

隠されてきた「偉大な」芸術家の物語

李君棠=文/垂垂=絵
多田麻美=訳
発売日
2025年11月26日
本体価格
3,000円+税
判型
A5判・並製
頁数
280頁
ISBN
978-4-8459-2407-3
原題
艺术史的另一半
ブックデザイン
石島章輝(イシジマデザイン制作室)

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なぜ偉大な女性芸術家は「いなかった」のか?
アルテミジア・ジェンティレスキ、マリア・ジビーラ・メーリアン、葛飾応為、ベルト・モリゾ、フリーダ・カーロ、リー・クラスナー、ルイーズ・ブルジョワ……
イラストとマンガで学ぶ、23人の語られなかった「美術の物語」。

ルネサンス、バロック、浮世絵、印象派、バウハウス、シュルレアリスム、現代美術まで──
本書は美術の歴史における重要な出来事や潮流を解説しながら、13世紀から現代にいたる23人の女性芸術家の歩みをたどり、これまでの美術史の「もう半分」とも呼べる世界を浮かび上がらせます。

「北斎の娘」とは、「マネのミューズ」とは、「ロダンの恋人」とは、「ポロック夫人」とは、誰だったのか。
男性の名前の影に隠されてきた女性たちを、ひとりの芸術家として見つめ直し、それぞれが驚くべき創造へと至った軌跡を明らかにします。

本書はまた、美術史家リンダ・ノックリンの立てた問い「なぜ偉大な女性芸術家はいなかったのか?」に対して、個々の芸術家の背景を踏まえて応答します。
女性たちを「美術の物語」から退けてきた社会の構造や制約を、フェミニズムの視点から解き明かしています。

豊富なイラストとマンガで、世代を超えて楽しめる、新しい美術史入門。
あなたの世界を広げ、知的好奇心を刺激し、ときには勇気づけてくれる一冊です。

【本書に登場するおもな女性芸術家】
カタリナ・ファン・へメッセン
ソフォニスバ・アングイッソラ
ラヴィニア・フォンターナ
アルテミジア・ジェンティレスキ
ユディト・レイステル
ラッヘル・ライス
マリア・ジビーラ・メーリアン
アンゲリカ・カウフマン
管道昇
文俶
葛飾応為
ベルト・モリゾ
メアリー・カサット
カミーユ・クローデル
マリアンネ・フォン・ヴェレフキン
マリアンネ・ブラント
レオノーラ・キャリントン
フリーダ・カーロ
タマラ・ド・レンピッカ
リー・クラスナー
ジョージア・オキーフ
アイダ・オキーフ
ルイーズ・ブルジョワ


目次

序文 女性芸術家になること 文/竜萩
まえがき 歴史上に偉大な女性芸術家はいたか?
なぜ偉大な女性芸術家はいなかったのか?

第1章 フランドルとイタリア 15〜17世紀

芸術家は生まれつき芸術家なの?
カタリナ・ファン・へメッセン 私は芸術家 私を見て
誰が「偉大さ」を定義するの?──最初に美術史を書いた人
ソフォニスバ・アングイッソラ 歴史家に認められることがゴールじゃない
ラヴィニア・フォンターナ なぜ女性は女性のヌードを描けないの?
アルテミジア・ジェンティレスキ 「女性ヒーロー」の代弁者

第2章 オランダ、フランス、スイス、イギリス 17〜18世紀

芸術は路上の露店で売れるもの?──オランダの公開芸術市場
ユディト・レイステル 美術界も嘘が嘘を呼ぶ?
宝物はみんなのもの──驚異の部屋から現代の博物館の誕生まで
ラッヘル・ライス 千金に値する花
マリア・ジビーラ・メーリアン 毛虫を美術史に残すにはどうすればいい?
待って、まさかイタリア人だけが何がよい芸術か定義できるの?
アンゲリカ・カウフマン 「絶対的に完璧」な女性芸術家なんて存在するの?

第3章 中国と日本 13〜19世紀

彼女たちは忘れられる運命なの?
管道昇 乾隆帝は言った「書道であれ、絵画であれ、みな彼女から学ぶべきだ」
文俶 三百年来 中国の花鳥画にもっとも秀でた女性
絵はどこに現れる?──日本の応用美術
日常生活をめぐる芸術──浮世絵
葛飾応為 筆跡が見つからないのは私の助手としての美徳

第4章 フランス 19世紀

「ジャポニスム」
描いた後、どこで観てもらう?──愛と憎しみが入り混じるサロン・ド・パリ
サロン・ド・パリ
芸術家と評論家 どちらの意見に値打ちがある?──芸術家が一銭も受け取れずに勝つ
「現代生活の画家」になろう!
「印象派」の誕生
ベルト・モリゾ 光で光を表現する
メアリー・カサット 美術史上最初の「モダン・ウーマン」
印象派を売り込む──現代のアート市場の誕生
女性芸術家も《ダビデ》を創れる?
カミーユ・クローデル 彫刻家になろうとする女性はこんなにも情熱的

第5章 ロシア、ドイツ、フランス、メキシコ 20世紀

美術がどんどんわからなくなった!──モダニズムの「テーマ」
マリアンネ・フォン・ヴェレフキン 女性芸術家を創作から遠ざけるものとは?
バウハウス──現代生活を変える
マリアンネ・ブラント 金属で暮らしに魔法をかける
小便器の現代美術における重要性──ダダイズム
夢の中の自由──シュルレアリスム
レオノーラ・キャリントン 現実を逃れたらいつか幻想の王国へ行ける
フリーダ・カーロ シュールな現実こそ私の現実
タマラ・ド・レンピッカ 私は記録する ぜいたくに溺れた時代を

第6章 アメリカ 20世紀

隠された問題──女性芸術家はどこで仕事をする?
リー・クラスナー 心残りが私の創作の糧
ジョージア・オキーフ アイダ・オキーフ 世界で最も高値の女性芸術家と……誰?
ルイーズ・ブルジョワ 女性は裸にならないと美術館に入れないの?

あとがき
訳者あとがき

プロフィール

[文]
李君棠(リー・ジュンタン)
ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンで比較文学の修士号を取得後、ある書店でマーケティングスーパーバイザーを務める。物語を語るスタイルで文化的なテーマを人気商品にするのが得意。国内外の美術史関係の教養書を数多く読み込むなかで「女性芸術家に焦点を当てた一般向けの美術史の教養書」という市場の空白があると気づく。「すばらしい商品」として、女性芸術家の作品を理解しやすい言葉で多くの読者に普及させたいと願っている。

[絵]
垂垂(チュイチュイ)
挿絵画家、絵本作家。博物館学の学士号、工芸美術専攻の修士号を取得。一般向けの教養絵本の制作に力を注ぐ。作品は人文、芸術、化学、物理、生物、神経科学などの分野に及ぶ。著作に『もし世界がシリーズ』の科学書、『私たちの一日』など。2021年、フォーブス「世界を変える30歳未満」アート部門に選出。

[訳]
多田麻美(ただ・あさみ)
アートライター、作家、翻訳者。1973年生まれ。テーマは中国とロシアの文化。著書に『シベリアのビートルズ』(亜紀書房、2022)、『中国 古鎮をめぐり、老街をあるく』(亜紀書房、2019)、『映画と歩む、新世紀の中国』(晶文社、2016)、『老北京の胡同──開発と喪失、ささやかな抵抗の記録』(晶文社、2015)。訳著に『乾隆帝の幻玉──老北京骨董異聞』(劉一達著、中央公論新社、2010)、『北京再造──古都の命運と建築家梁思成』(王軍著、集広舎、2008)。共著に『ファンキー中国』(灯光舎)、『北京探訪』(愛育社)、『北京を知るための52章』(明石書店)など。