私たちは何をプレイしているのか?
ゲーム研究の多面性と新たな可能性をとらえる、キーワード35+ブックガイド20
遊び、ルール、チート、没入、アバター、物語、ゲーム実況、インタラクティビティ……
押さえておきたい理論から、ゲーム文化が理解できる幅広いキーワード、さらに深く学ぶための重要文献まで。
これ一冊で論点がつかめる、待望のゲームスタディーズ入門!
「ゲームと遊びを研究する総合的な学問分野」として生まれたゲームスタディーズは、今大きな注目を集める、まさに21世紀の学問分野と言えるでしょう。
本書は、さまざまな領域を巻き込み活況を呈するゲームスタディーズを学ぶうえで、知っておきたい基礎知識と重要な論点を、多様な視点とアプローチでわかりやすくコンパクトに解説した、本邦初・待望のゲームスタディーズの入門書です。
[遊び][ルール][インタラクティビティ]などの基礎概念、[チート][没入][アバター][物語]などのゲーム文化を形成するキーワード、ヨハン・ホイジンガからイェスパー・ユールまでゲーム研究の必読文献ガイドをバランス良くマッピングし、幅広い射程がありながらポイントを絞り込んだ、ありそうでなかった構成が本書の大きな特徴です。
ゲームとは何か、なぜゲームは面白いのか、私たちはいったい何を遊んでいるのか。
哲学や人類学、心理学、社会学、メディア研究、音楽学といったさまざまな領域を巻き込みながら展開してきたゲームスタディーズの、これまでの蓄積とこれからの可能性を概観できる本書は、ゲームを学びたい人だけでなく、ゲームをもっと楽しみたい人、語りたい人にとっても役に立つ、“最初に読むべき”一冊です。
本書という地図を片手に、ゲームスタディーズの世界へ、第一歩を踏み出してみましょう。
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◆シリーズ[クリティカル・ワード]
現代社会や文化および芸術に関わるさまざまな領域を、[重要用語]から読み解き学ぶことを目指したコンパクトな入門シリーズです。
基本的かつ重要な事項や人物、思想と理論を網羅的に取り上げ、歴史的な文脈と現在的な論点を整理します。もっと深く理解し、もっと面白く学ぶために必要な基礎知識を養い、自分の力で論じ言葉にしていくためのヒントを読者に提供する新しい入門書です。
目次
はじめに 吉田寛
第1部 理論編──ゲームスタディーズの基礎概念
1 ルール
1 ルール概念の多義性、多様な性質 井上明人
2 ゲームはルールか? 松永伸司
3 ルールはゲームを定義する 吉田寛
2 フィクション
1 遊びの本質としてのフィクション 吉田寛
2 ゲームはフィクションか? 松永伸司
3 メディア
1 ゲームとメディアはどういう関係にあるのか? 吉田寛
2 ゲームはメディアを超えられない マーティン・ロート
4 遊び
1 ゲームと遊びの関係について多様な理解 井上明人
2 遊びの創造性 吉田寛
3 ゲームは遊びではない マーティン・ロート
5 エンターテインメント
1 ゲームに関わる「娯楽」概念小史 井上明人
2 ゲームはエンターテインメントではない マーティン・ロート
6 ソーシャル
1 ゲームの社会的使命 吉田寛
2 ネットワーク外部性、ユーザー分類、メタ認知 井上明人
3 ゲームはソーシャルではない マーティン・ロート
7 インタラクティビティ
1 インタラクティビティと「面白さ」 吉田寛
2 「循環」論とインタラクティビティ 井上明人
8 人工物
1 何がゲームとして見出されるのか 井上明人
2 ゲームは人工物か? 松永伸司
第2部 キーワード編──ゲーム文化を理解するための重要トピック
1 アーカイブ 福田一史
2 RTA 竹本竜都
3 アイテム 山口浩
4 アクセシビリティと障害の表象 近藤銀河
5 アバター/プレイヤーキャラクター ムン・ゼヒ
6 インディーゲーム 今井晋
7 NPC 髙松美紀
8 エミュレーション 吉田寛
9 音・音楽 田中治久
10 学習 井上明人
11 ゲーミフィケーション 井上明人
12 ゲーム行動症 井出草平
13 ゲーム実況 根岸貴哉
14 ジェンダーとセクシュアリティ 近藤銀河
15 スポーツ 吉田寛
16 チート 楊思予
17 ツーリズム 岡本健
18 ナビゲーション 谷川嘉浩
19 批評 藤田直哉
20 VR 池山草馬
21 プラットフォーム マーティン・ロート
22 没入 吉田寛
23 マジックサークル マーティン・ロート
24 物語 倉根啓
25 ユーザー生成コンテンツ 小林信重
26 倫理 西條玲奈
27 歴史記述(ゲーム史を書くこと) 田中治久
第3部 ブックガイド編──遊びとゲームを考えるための必読文献
1 ヨハン・ホイジンガ『ホモ・ルーデンス』 マーティン・ロート
2 グレゴリー・ベイトソン「遊びと空想の理論」 吉田寛
3 ロジェ・カイヨワ『遊びと人間』 松永伸司
4 ジャック・アンリオ『遊び』 吉田寛
5 ミハイ・チクセントミハイ『退屈と不安を越えて』 木村知宏
6 バーナード・スーツ『キリギリス』 吉田寛
7 ゲイリー・アラン・ファイン『共有されるファンタジー』 髙橋志行
8 ブライアン・サットン゠スミス『遊びの曖昧さ』 井上明人
9 ジャネット・H・マレー『ホロデッキ上のハムレット』 吉田寛
10 エスペン・J・オーセット『サイバーテキスト』 吉田寛
11 イェスパー・ユール『ハーフリアル』 松永伸司
12 アレクサンダー・R・ギャロウェイ『ゲーミング』 マーティン・ロート
13 T・L・テイラー『世界をまたぐ遊び』 池山草馬
14 イアン・ボゴスト『説得的ゲーム』 藤本徹
15 ミア・コンサルヴォ『チート行為』 小林信重
16 レン・コリンズ『ゲームサウンド』 尾鼻崇
17 グラント・タヴィナー『ビデオゲームの芸術』 松永伸司
18 ニック・ダイア゠ウィザフォード&グレイグ・デ・ピューター『帝国のゲーム』 マーティン・ロート
19 エイドリアン・ショー『ゲーミング・アット・ジ・エッジ』 武澤威
20 トーマス・S・ヘンリックス 『遊びと人間の条件』 マーティン・ロート
人名索引
事項索引
プロフィール
[編著]
吉田寛(よしだ・ひろし)
東京大学大学院人文社会系研究科・文学部教授(美学芸術学研究室)。専門は感性学、ゲーム研究。著書に『デジタルゲーム研究』(東京大学出版会、2023年、第33回大川出版賞受賞)、『絶対音楽の美学と分裂する〈ドイツ〉』(青弓社、2015年、第37回サントリー学芸賞受賞)など。美学会会長。
井上明人(いのうえ・あきと)
ゲーム研究者。現在、立命館大学准教授。ゲームという経験が何かについて論じる『中心をもたない、現象としてのゲームについて』を連載中。単著に『ゲーミフィケーション』(NHK出版、2012年)。開発したゲームとして、震災時にリリースした節電ゲーム『#denkimeter』や『コモンズの悲喜劇』などがある。
松永伸司(まつなが・しんじ)
京都大学大学院文学研究科准教授。専門は美学。著書に『ビデオゲームの美学』(慶應義塾大学出版会、2018年)、訳書にイェスパー・ユール『ハーフリアル──虚実のあいだのビデオゲーム』(ニューゲームズオーダー、2016年)、ミゲル・シカール『プレイ・マターズ─遊び心の哲学』(フィルムアート社、2019年)など。
マーティン・ロート(Martin ROTH)
立命館大学大学院先端総合学術研究科教授。専門はゲームスタディーズ、デジタル文化、批判理論、日本研究。著書に『Thought-provoking Play』(ETC Press、2017年、オープンアクセス)、『Unboxing Japanese Videogames』(MIT Press、2025年、オープンアクセス)など。
[著](50音順)
池山草馬(いけやま・そうま)
九州大学人間環境学研究院学術研究員。専門は文化人類学、デジタル人類学、VR・仮想世界研究。論文に「重なり合うアバターたち─VRChatにおけるアバター/人間関係の諸相」(『VTuber学』共著、岩波書店、2024年)など。
井出草平(いで・そうへい)
多摩大学情報社会学研究所客員教授。専門は社会学、精神医学、応用統計学。著書に『アスペルガー症候群の難題』(光文社、2014年)、『ひきこもりの社会学』(世界思想社、2007年)、『日本の難題をかたづけよう──経済、政治、教育、社会保障、エネルギー』(共著、光文社、2012年)など。
今井晋(いまい・しん)
東京大学大学院人文社会系研究科美学博士課程単位取得退学。2010年頃からゲームジャーナリスト、パブリッシャー、リサーチャーとして活躍。世界各国のインディーゲームの取材・インタビュー・イベントの審査員を通して書籍執筆なども務める。
武澤威(う・ぜうい WU Zewei)
立命館大学先端総合学術研究科博士課程で在学中。専門は中国文学、ゲーム研究。論文に「「ネットゲーム小説」ジャンルの成立──2000年代中国におけるゲームプレイとメディア環境を中心に」(『Core Ethics』21号、2025年)など。
岡本健(おかもと・たけし)
近畿大学総合社会学部教授。情報学研究所兼務。京都大学大学院文学研究科・文学部 客員准教授。専門は観光学、メディア・コンテンツ研究。著書に『ゾンビ学』(人文書院、2017年)、『アニメ聖地巡礼の観光社会学』(法律文化社、2018年)、『メディア・コンテンツ・スタディーズ』(共著、ナカニシヤ出版、2020年)、『VTuber学』(共著、岩波書店、2024年)など。
尾鼻崇(おばな・たかし)
立命館大学映像学部准教授、Studio Ludomusica代表。専門はルドミュジコロジー、ゲームアーカイブ、博物館情報学。著書に『映画音楽からゲームオーディオへ』(晃洋書房、2016年)、『クリティカル・ワード ポピュラー音楽』(共著、フィルムアート社、2023年)など。ゲーム音楽展「Ludo-Musica」のキュレーター。
木村知宏(きむら・ともひろ)
東京大学大学院情報学環特任研究員。専門は心理学、ゲーム研究。主な論文に「反応速度を要求するデジタルゲームが感情経験に与える影響」(『デジタルゲーム学研究』7巻2号、2015年)、「即時的な反応を要求するゲームとその熟達が感情経験に与える影響」(『デジタルゲーム学研究』13巻1号、2020年)など。
倉根啓(くらね・はじめ)
京都大学大学院文学研究科博士課程。専門は美学、物語論、ゲーム研究。論文に「ゲームプレイはいかにして物語になるのか」(『REPLAYING JAPAN』5号、2023年)、「ビデオゲームのストーリーは非整合的なのか」(『REPLAYING JAPAN』6号、2024年)など。
小林信重(こばやし・のぶしげ)
東北学院大学情報学部教授。専門は文化社会学、メディア研究、ゲーム研究。著書に「ゲーム産業成長の鍵としての自主制作文化」(東京工業大学博士論文、2013年)、『デジタルゲーム研究入門』(編著、ミネルヴァ書房、2020年)、訳書にフランス・マウラ『ゲームスタディーズ入門──文化のなかのゲーム』(ニューゲームズオーダー、2024年)など。
近藤銀河(こんどう・ぎんが)
東京芸術大学大学院美術研究科博士課程在籍。専門は美術史、クィア理論。著書に『フェミニスト、ゲームやってる』(晶文社、2024年)、『われらはすでに共にある──反トランス差別ブックレット』(共著、現代書館、2023年)、『『シン・エヴァンゲリオン』を読み解く』(共著、河出書房新社、2021年)など。
西條玲奈(さいじょう・れいな)
東京電機大学教養教育センター人文・社会系助教。専門は分析哲学。著書に『〈ひと〉から問うジェンダーの世界史第3巻 「世界」をどう問うか?』(共著、大阪大学出版会、2024年)、論文に「ロビン・デンブロフのジェンダークィア理論から女性の定義問題を考える」(『総合文化研究』東京電機大学総合研究所、21号、2023年)など。
髙橋志行(たかはし・むねゆき)
会社員・立命館大学ゲーム研究センター客員協力研究員(2024年度−現職)・一般社団法人アナログゲームミュージアム運営委員会事務局長。論文に「盤上の同一性、盤面下のリアリティーズ」(『多元化するゲーム文化と社会』共著、ニューゲームズオーダー、2019年)、「今井哲也作品と『メギド72』──その相通ずる美点について」(『ユリイカ』54巻13号、2022年)など。
髙松美紀(たかまつ・みき)
立命館大学大学院映像研究科を修了し、現在はゲームプランナーとして就業中。専門はゲーム研究、主にゲームキャラクターとプレイヤーの関係性。論文に「私であって私でない存在─ビデオゲームのプレイヤーはプレイヤーキャラクターをどう認識しているのか」(共著、『立命館映像学』17号、2023年)など。
竹本竜都(たけもと・りゅうと)
批評家・ドラマ助監督。限界研所属。主にゲーム、ネットカルチャー、ミステリを題材に執筆。著書に『プレイヤーはどこへ行くのか─デジタルゲームへの批評的接近』(共編著、南雲堂、2018年)など。
田中治久(たなか・はるひさ)
フリーランスのゲーム史/ゲーム音楽史研究家。主著に『チップチューンのすべて』(誠文堂新光社、2017年)、『ゲーム音楽はどこから来たのか──ゲームサウンドの歴史と構造』(Pヴァイン、2024年)、監著に『ゲーム音楽ディスクガイド』(Pヴァイン、2019年)ほか。
谷川嘉浩(たにがわ・よしひろ)
京都市立芸術大学美術学部デザイン科講師。専門は哲学など。著書に『増補改訂版 スマホ時代の哲学』(ディスカヴァー携書、2025年)、『人生のレールを外れる衝動のみつけかた』(筑摩書房、2024年)、『鶴見俊輔の言葉と倫理』(人文書院、2022年)、『信仰と想像力の哲学』(勁草書房、2021年)など。
根岸貴哉(ねぎし・たかや)
立命館大学衣笠総合研究機構客員研究員。専門は野球史研究、メディア論。著書に『野球のメディア論──球場の外でつくられるリアリティー』(青弓社、2024年)、論文に「ゲーム、実況者、視聴者の関係性からみるゲーム実況生放送の構造」(『REPLAYING JAPAN』5巻、2023年)など。
福田一史(ふくだ・かずふみ)
立命館大学映像学部准教授。専門は図書館情報学、人文情報学、ゲーム研究。論文に「ビデオゲームの保存と目録」(『情報の科学と技術』71巻8号、366–371頁、2021年)、「著作を含むビデオゲーム書誌データベースの構築」(『人文科学とコンピュータシンポジウム論文集2019』77–84頁、2019年)など。
藤田直哉(ふじた・なおや)
日本映画大学准教授。批評家。専門は、戦後日本SFと大衆文化、テクノロジーと文化・芸術の相互作用。著書に『虚構内存在』(作品社、2013年)、『新世紀ゾンビ論』(筑摩書房、2017年)、『攻殻機動隊論』(作品社、2021年)、『新海誠論』(作品社、2022年)『ゲームが教える世界の論点』(集英社、2023年)、『ゲーム作家 小島秀夫論』(作品社、2025年)など。
藤本徹(ふじもと・とおる)
東京大学大学院情報学環教授。専門はゲーム学習論、教育工学。著書に『シリアスゲーム──教育・社会に役立つデジタルゲーム』(東京電機大学出版局、2007年)『シリアスゲーム(メディアテクノロジーシリーズ)』(編著、コロナ社、2024年)、『ゲームと教育・学習』(編著、ミネルヴァ書房、2017年)など。
ムン・ゼヒ(MOON JHee)
立命館大学先端総合学術研究科に博士課程で在学中。ゲームキャラクターの表象やプレイヤーとの関係を重点的に研究している。最近はキャラクター解釈の中で生じるプレイヤーコミュニティ間の衝突に注目している。
山口浩(やまぐち・ひろし)
駒澤大学グローバル・メディア・スタディーズ学部教授。専門は経営学。著書に『就活メディアは何を伝えてきたのか』(青弓社、2023年)、『ソーシャルメディア論──「つながり」を再設計する』(藤代裕之編、青弓社、2015年)、『コンテンツ学』(長谷川文雄・福冨忠和編、世界思想社、2007年)など。
楊思予(よう・しよ YANG Siyu)
立命館大学先端総合学術研究科博士号候補。専門はゲーム研究。論文に「オンラインゲームにおける〈イレギュラープレイ〉──中国における『Battlefield V』のプレイヤー行為の分析を通じて」(『Core Ethics』20号、2024年)、「『サイバーWW1』『Battlefield 1』におけるチーターをめぐるプレイヤー集団間の衝突の分析」(『REPLAYING JAPAN』6号、2024年)など。