ストーリーテリングの科学

脳と心をひきつける物語の仕組み

ウィル・ストー=著
府川由美恵=訳
発売日
2025年12月26日
予価
2,400円+税
判型
四六判・並製
頁数
352頁(仮)
ISBN
978-4-8459-2414-1
Cコード
0090
デザイン
岡部正裕(HFU design firm)
原題
The Science of Storytelling

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人間はなぜ「物語」を求めるのか?
すぐれた物語はいかに脳を刺激するのか?

脳科学・心理学の知見を生かせば、ストーリーはもっと魅力的に語れる!
イギリスで大人気のライティング講師が解き明かす、共感を生む創作の秘密

人は物語によって他者とつながり、相互に監視し、ときに対立もしてきました。
物語は、小説や映画にかぎらず、新聞からゲーム、歌、夢の中まで、社会のあらゆるところに存在しています。
「われわれを人間たらしめるのは物語である」「物語はわれわれだ」と著者は言います。
では、物語を求める人間、そして人間が求める物語の本質とは、どのようなものなのでしょうか?
本書は、脳科学・心理学から人間/物語の秘密を解き明かしていく、まったく新しいストーリーテリング論です。

一番の特徴は、プロット重視の従来的な物語理論とは対照的に、キャラクターをストーリーテリングの中心に据えていること。
魅力的なキャラクターを作るうえでカギとなるのは、キャラクターの〈欠点〉。
それも、自分が正しいと思い込んでいる〈信念〉こそが、キャラクターを唯一無二にする欠点なのです。
私たちの知覚や認識をつかさどる脳は、実は不合理な進化を遂げた「信頼できない」存在。
都合のよい事実だけを取り入れ、それに反するものは退けることで、自分をヒーローに仕立て上げてしまいます。
自分が信じるものの致命的なまちがいを認識し、自分を変えようとするのは至難の業。
しかし、それを成し遂げ、「自分は何者なのか?」「何者になるべきか?」という問いに答えを出そうとするキャラクターが、プロットの原動力となります。

本書ではこのように、人間の脳と心に注目して、共感を生む物語のしくみを徹底解剖。
創作の開始時点から使える実践的な付録も収録し、よりよいストーリーテリングの秘密を余すところなく伝授します。
小説や映画にかぎらず、マンガ、ノンフィクション、エッセイ、ゲームや動画の制作からビジネスシーン、そして日常的な雑談まで……
すべての〈物語の語り手〉に読んでほしい一冊です。

人の脳は、この恐ろしい真実からわれわれの目を逸らさせるべく、希望ある目標で人生を埋め、そのために努力するよう励ましてくれる。われわれの欲しいもの、それを手に入れる闘いの紆余曲折が、すべての人々の物語となる。物語が人々の存在に意味という幻影をもたらし、恐れから目をそむけさせる。[…]物語はどこにでもある。物語はわれわれだ。(「はじめに」より)

本書の内容をさらに詳しくご紹介!

脳や心のはたらきを知れば、実際の創作にも役立つヒントが見えてくる!

◎私たちは、なぜそうするのか、なぜそう感じるのかを、実は知らない。その理由はすべて、脳がでっち上げた作り話にすぎない──それは物語の登場人物にとっても同じである。

◎現実世界の私たちと同じように、登場人物にも「欠点」が必要だ。他者を含む現実をコントロールするための理論や信念に歪みのある人物ほど、脳の注意を惹きつける。

◎一度完成した世界に対する認識のモデルを、脳は守ろうとする。主人公が自分のモデルを疑い、予想外の行動に出るような「着火点」を物語の始めに置いてみよう。

◎脳は、情報を処理するために、因果関係を作らずにはいられない。因果関係を「語るのではなく見せる」ことで、読者を物語に入りこませよう。

◎狩猟採集の時代から、物語は部族のプロパガンダとして機能してきた。悪い行いを罰し、善い行いに報いたいと思うのは人間の本能だ。物語にスパイスが足りないときは、読者の「道徳的な怒り」をかき立てるものは何かを考えてみよう。

著名人からも絶賛の声!

★全世界で15万部突破!/『サンデー・タイムズ』紙ベストセラー

ストーリーテリングを科学的に解き明かす著者のアプローチほどユニークなものはない。経験の程度によらずすべての作家に、作品を深く、より豊かにするための新たな理解を与えてくれるだろう。
──クレイグ・ピアース(脚本家・俳優/『ムーラン・ルージュ』『華麗なるギャツビー』脚本)

本書は、芸術やライティングの科学と同じように、人間の本質についても照らしだしている。すでにもう一度読み直したくてたまらない。
──デビッド・ロブソン(科学ジャーナリスト/『知性の罠:なぜインテリが愚行を犯すのか』著者)

これほどまでに夢中にさせ、いままで読んだもの、書いたものに関する問いを喚起させる本は滅多にない。傑作だ。私は畏敬の念を抱いている。
──アダム・ラザフォード(遺伝学者・サイエンスライター/『遺伝学者、レイシストに反論する』著者)


目次

はじめに
第1章 世界の創造
第2章 欠点のある自己
第3章 物語的な問い
第4章 プロット、エンディング、意味
付録 聖なる欠点アプローチ

本文について
謝辞
訳者あとがき
註と参考文献
索引

プロフィール

[著]
ウィル・ストー(Will Storr)
受賞歴のある作家・ライターとして、『ガーディアン』『サンデー・タイムズ』『ニューヨーカー』『ニューヨーク・タイムズ』などの新聞・雑誌に寄稿。ロンドンでストーリーテリングに関する講座をおこなうほか、ワークショップを各地で開催している。著名人のゴーストライターとしても活躍。邦訳された著書に『ステータス・ゲームの心理学』(原書房、2022年)がある。

[訳]
府川由美恵(ふかわ・ゆみえ)
明星大学通信教育部教育心理コース卒。主な訳書にボグラー&マッケナ『物語の法則——強い物語とキャラを作れるハリウッド式創作術』、サルバトーレ『アイスウィンド・サーガ』シリーズ(以上KADOKAWA)、クロン『脳が読みたくなるストーリーの書き方』、ボグラー『作家の旅 ライターズ・ジャーニー』(以上フィルムアート社)、ハーパー『探偵コナン・ドイル』(早川書房)、ハート『ウェイワードの魔女たち』(集英社)など。