演出をさがして 映画の勉強会

濱口竜介・三宅唱・三浦哲哉 =著
発売日
2025年12月12日
本体価格
2,600円+税
判型
四六判・並装
頁数
424頁
ISBN
978-4-8459-2500-1
Cコード
C0074
装丁
加藤賢策(LABORATORIES)

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現代日本映画を牽引する映画監督・濱口竜介と三宅唱、そして同時代を並走してきた映画研究者・三浦哲哉の3人による「映画の勉強会」が発足!

映画の「演出」とは何か?
ロベール・ブレッソン、ビクトル・エリセ、トニー・スコット、侯孝賢──
巨匠たちの作品の「演出」に焦点を当て、
つかまえようとしては逃げていく、目には見えない「演出」のありかを探す。
見れば見るほど発見があり、考えれば考えるほど面白い「演出」の魅力に迫る、
映画の演出をめぐる、終わりなき学びのドキュメント。

 

画面に映る映像になぜ心が動かされるのでしょうか。
そこに張り巡らされている「演出」とは、いったいどういうものなのでしょうか。

本書は、映画監督の濱口竜介と三宅唱、映画研究者の三浦哲哉という気心の知れた3人が集い、2018年より続けてきた映画の演出についての勉強会の「第1集」です。
3人がそれぞれ手にした地図とアイテムを持ち寄り、共に旅に出る、映画の演出をめぐる冒険の書です。

映画から受け取った驚きや喜び、問い、そして戸惑いを、共有する。
3人の勉強会だからこそ見つけられる(ひとりでは見つけられなかったかもしれない)発見がある。
見つける人と見逃す人が交代していきながら、その発見をバトンにしてリレーしていく。

そんな「映画の勉強会」の面白さ、興奮、熱気を存分にお楽しみ下さい。

【言及される主な作品】
ロベール・ブレッソン『ブローニュの森の貴婦人たち』『ジャンヌ・ダルク裁判』『やさしい女』『ラルジャン』
ビクトル・エリセ『マルメロの陽光』『エル・スール』『ミツバチのささやき』
トニー・スコット『ハンガー』『ザ・ファン』『エネミー・オブ・アメリカ』『デジャヴ』『アンストッパブル』
侯孝賢『ミレニアム・マンボ』『百年恋歌』『童年往事 時の流れ』『悲情城市』
*
濱口竜介『ドライブ・マイ・カー』
三宅唱『ケイコ 目を澄ませて』

 

──映画を勉強するということは、いったいなんなのでしょうかね?

 

  • 三宅唱監督の最新作『旅と日々』(つげ義春:原作)公開中!
    https://www.bitters.co.jp/tabitohibi/
  • 濱口竜介監督の最新作『急に具合が悪くなる』(宮野真生子・磯野真穂:原作)は2026年公開予定!

イベント情報

濱口竜介・三宅唱・三浦哲哉 『演出をさがして 映画の勉強会』刊行記念イベント


目次

まえがき 三浦哲哉

第1章 ロベール・ブレッソン 欲望しなければこんなショットは撮れない
『ブローニュの森の貴婦人たち』
涙を見逃す映画|古典的なカッティングの完成度|マリア・カザレスの演技|ブレッソン=シネフィル説|アニエスの造形
『ジャンヌ・ダルク裁判』
目線の上げ下げと台詞|テキストと俳優の身体の結びつき|『シネマトグラフ覚書』の読み方
『やさしい女』
ブレッソンにおける生と死|不動と運動、彫刻と映画|接触と音、生の表現
『ラルジャン』
音のマッピング|言葉と運動――音、アクション、フレームの三位一体

第2章 ビクトル・エリセ ささやき声に全身を開いていく体験
映画の奥に続く世界への扉
『マルメロの陽光』
フィクション/ドキュメンタリー|アマチュア俳優/プロの俳優|ルーティン・儀式・作法|被写体を罠にかける/被写体のステージを用意する
『エル・スール』
エリセの慎み――カット割り/クレーン|ダウジング、あるいはアクションとエモーション|カメラが愛する顔
『ミツバチのささやき』
世界の肌理/テクスチャーに触れる|ロングショット/縦構図は時間を撮る|音は映画の奥行きを作る
変えようのない一回きりのもの

第3章 トニー・スコット 大きな流れを食い止める小さな抗い
トニー・スコットとの邂逅
『ハンガー』
顔の映画|身体の動きとともに世界が動く|顔を撮ることで思考を撮る
『ザ・ファン』
顔の蓄積、距離の創出|取り返しのつかなさをどう撮るか|映像と登場人物のツーショット
『エネミー・オブ・アメリカ』
マルチカメラでの高度な段取り|トニー・スコット映画の音楽性|「管理しようとする力」と「逃げようとする力」|ポイント・オブ・ノー・リターン|この世界にはちゃんと愚か者がいる
『トップガン マーヴェリック』について
『デジャヴ』
岩石の映画|理想的なドキュメンタリーとしての冒頭10分|スノーホワイト、あるいはリモート映画|監視カメラの倫理|『デジャヴ』の荒唐無稽さはなぜ信じられるのか|永遠の笑顔
『アンストッパブル』
過ぎ去ったものをスクリーンに焼き付ける|鏡越しに見る身振り|生活の設計|大きな流れに抗う生を捉える

第4章 侯孝賢 もはやフレームなど存在しないように感じる
時間の流れ、出来事の推移、状態の変化
『冬冬の夏休み』――侯孝賢の手口|『憂鬱な楽園』――時間を圧縮して配置する|『珈琲時光』――作られた場を流動するカメラ
被写体とカメラの距離からフレーム外を生み出す
『ミレニアム・マンボ』――場面の広さ、フレームの狭さ|『百年恋歌』――長いショットの変容
映画のリズムについて
『童年往事 時の流れ』
ゲームとしての演出|周縁の人々への眼差し
『悲情城市』
歴史の渦中にカメラを置く|出来事と物語=歴史|凝縮したスープのように|断片と省略

第5章  『ドライブ・マイ・カー』
濱口竜介 映画の「演出」はいかにして発見されるのか
ファーストシーンをめぐって――観客に負荷をかける|メイクルーム――日常と仕事が切り替わる場所|鏡の中の顔を撮ること/正面から顔を撮ること|サブテキストの使い方|自動車と音、自動車と楽屋|演技の根底には不安がある|公園での立ち稽古について――素材以上に良い編集を求める|海っぺりの家福とみさき|顔の傷と北海道の大地と覆われた原爆ドーム

第6章  『ケイコ 目を澄ませて』
三宅唱 「時間」はどのようにして映画に定着するのか
「岸井ゆきの」と「ケイコ」|手話と音、そして空間|街の中で「流れる時間」|人々のあいだの「流れる時間」|時間の厚みを映す|俳優たちがそこに「いる」こと|16ミリでの撮影について|ケイコは我々の一歩先を進んでゆく

収録日・初出一覧
作家紹介|第1章〜第4章
作品情報|第5章・第6章
索引

プロフィール

[著]
濱口竜介(はまぐち・りゅうすけ)
映画監督。2008年、東京藝術大学大学院映像研究科の修了制作『PASSION』が国内外の映画祭で高い評価を得る。その後も神戸の即興演技ワークショップから生まれた『ハッピーアワー』(2015)が多くの国際映画祭で主要賞を受賞。近年の監督作に『偶然と想像』(2021/第71回ベルリン国際映画祭審査員グランプリ)、『ドライブ・マイ・カー』(2021/第74回カンヌ国際映画祭脚本賞、第94回米アカデミー国際長編映画賞)、『悪は存在しない』(2023/第80回ヴェネツィア国際映画祭審査員グランプリ)がある。2024年、映画に関する講演・批評等をまとめた著書『他なる映画と1・2』(インスクリプト)を発表。2026年に『急に具合が悪くなる』を公開予定。

三宅唱(みやけ・しょう)
映画監督。1984年北海道札幌市生まれ。一橋大学社会学部卒業、映画美学校フィクションコース初等科修了。2012年、劇場公開第1作『Playback』が第65回ロカルノ国際映画祭インターナショナル・コンペティション部門に選出される。『きみの鳥はうたえる』(2018)、『ケイコ 目を澄ませて』(2022)、『夜明けのすべて』(2024)がベルリン国際映画祭ほかで上映され、第37回東京国際映画祭黒澤明賞をはじめ国内外の映画賞を受賞。2025年、『旅と日々』が第78回ロカルノ国際映画祭金豹賞を受賞。

三浦哲哉(みうら・てつや)
映画研究・批評、表象文化論、食文化研究。1976年福島県郡山市出身。東京大学大学院総合文化研究科超域文化研究科表象文化論コース博士課程修了。青山学院大学文学部比較芸術学科教授。著書に『自炊者になるための26週』(朝日出版社、2023年)、『LA フード・ダイアリー』(講談社、2021年)、『食べたくなる本』(みすず書房、2019年)、『『ハッピーアワー』論』(羽鳥書店、2018年)、『映画とは何か──フランス映画思想史』(筑摩選書、2014年)、『サスペンス映画史』(みすず書房、2012年)。共著に『オーバー・ザ・シネマ──映画「超」討議』(フィルムアート社、2018年)