絵が物語になるとき、何が起きているのか?
「絵」と「表現」のその不思議な関係を解き明かす!
文字のない絵本は、どのようにして「物語」を語るのか。
マンガ・絵本作家であり研究者でもある著者が、
多彩な作家・作品の豊富な事例を丹念に収集しながら、
「絵」が主体となって物語を伝える表現の仕組みを明らかにし、
文字を用いない表現の力と可能性を鮮やかに描き出す。
安野光雅の「旅の絵本」シリーズや、世界各国に見られる文字のない「赤ずきん」絵本、
さらに「くまのアーネストおじさん」シリーズ、『アンジュール』と『たまご』、ショーン・タンの『アライバル』……
文字のない絵本に特有のパターンを読み解き、ストーリーテリングの手法とその豊かさを探究する画期的な絵本論。
目次(仮)
はじめに
第1章 文字のない絵本と絵本表現
絵本の定義について
文字のない絵本の定義について
絵本表現における絵の働き
絵本表現における文字の働き
絵を中心とする現代の絵本観
絵本における文字の量・役割
絵と文字の共同しない表現
ほとんど文字のない絵本
文字を付け加えられた絵本
文字のない絵本表現の特徴
文字のない絵本に介在する少量のテキスト
文字のない絵本の表現を考えるために
第2章 文字のない絵本へのアプローチ
欧米の文字のない絵本の始まり
欧米での文字のない絵本の作例のリストアップ
文字のない絵本に関する欧米の研究
日本における文字のない絵本の始まり
日本の文字のない絵本の作例とリストアップ
日本における文字のない絵本の研究
「文字」と「言葉」の使い分けについて
「絵を読む」の不明瞭さ
文字のない絵本に関わるその他の議論
「文字がないから素晴らしい」のではない
本書におけるアプローチ
第3章 さまざまなタイプの文字のない絵本
タイプ分けの方法
テーマに沿って事物・場景を収集した絵本
運動・変容・移り変わりを見せる絵本
ゲーム性のある絵本
物語を内容とする文字のない絵本:掌編物語タイプ
物語を内容とする文字のない絵本:短編物語タイプ
物語を内容とする文字のない絵本:長編物語タイプ
個別の作品分析の必要性
[コラム]謎だらけのヴィンメルブッフ
第4章 物語絵本における文字を用いない表現──「くまのアーネストおじさん」シリーズの絵本表現
「アーネスト」シリーズの概要
「アーネスト」シリーズにおける文字の扱い
文字を使用しないパート:一画面のみの場合
文字を使用しないパート:複数画面が連続する場合
わかりにくさを回避するための工夫
シリーズ中の2冊の全編文字のない絵本
「アーネスト」シリーズにおける絵本表現とは
文字のないパートの有効性
第5章 『アンジュール』と『たまご』──文字のない絵本が目指す伝達
『アンジュール』と『たまご』の概要
2冊の表現の共通点
2冊の表現の異なる点
2冊を通して見えること
2冊において文字を用いない意義
新たな絵本表現を求めて
[コラム]韓国・台湾・香港・中国の作家たち
第6章 文字のない「赤ずきん」絵本──既存の物語を題材に
既存の物語を題材にする文字のない絵本
「赤ずきん」という物語の非限定性
14冊の「赤ずきん」を題材とする文字のない絵本
文字のない絵本の抱える課題とそれへの対応
クライマックスにおける狼と赤ずきんの会話の表現
読者の知識を活用することで生まれるユニークな表現
既存の物語に基づく文字のない絵本の意義と可能性
[コラム]安野光雅の文字のない絵本
第7章 『アライバル』──文字を共有しない人々へ向けて
『アライバル』の概要
繊細な紙面構成による物語表現
複雑な場面の語りへの対応
故郷と移住先の対比表現
言語の壁の表現
移民のテーマ:家族のアルバムとして
移民のテーマ:歴史上の物語として
文字を共有しない人々に向けた物語表現へ
第8章 文字のない絵本の物語表現とは
ジャンル共通の課題とその解決
読者の知識を前提とした表現
絵の特性を生かす表現
文字のない物語絵本を制作する意義・意味
おわりに
プロフィール
[著]
山本美希(やまもと・みき)
筑波大学芸術系准教授(現在)。筑波大学人間総合科学研究科芸術専攻博士後期課程修了、博士(デザイン学)。2009年から絵本作家・マンガ家としても活動しており、これまで6冊の作品がある。2011年に自身が出版した文字のない絵本(『爆弾にリボン』)の制作をきっかけに「文字のない絵本」の表現に関心を持つ。2016年より、筑波大学芸術系の教員として絵本・イラストレーション・マンガ等の研究・教育に携わる。受賞歴として手塚治虫文化賞新生賞(『Sunny Sunny Ann!』、2013)、文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞(『かしこくて勇気ある子ども』、2021)など。