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プロが選ぶオススメの物語創作指南書3冊 シナリオライター・渡辺祐真 / スケザネ選


小説投稿サイトや動画配信プラットフォームが整備され、誰もが自分の物語を発表できる時代。わたしたちは、誰もが「作者」になることができる時代を生きています。しかし、わたしたちの身の回りには、すでに膨大な数の物語(小説、マンガ、映画、ゲーム、アニメなど)が存在しています。どうすれば、人を惹きつける物語を書くことができるのでしょうか。その悩みを解消すべく、これまで数多くの物語創作指南書が刊行されてきました。書店行けば、さまざまな切り口の、そしてさまざまな難易度の指南書が並んでいます。あまりにもその数が多いので、どれを読めばよいのか分からないという方も多いのではないでしょうか。そこで本連載では、さまざまなジャンルで活躍するプロの作家の方々に、各自の視点から「オススメの物語創作指南書」を3冊選んでいただきます。

今回はシナリオライター・書評家・文筆家・編集・翻訳・書評系YouTuberとして活躍する渡辺祐真 / スケザネさん(@yumawata33)です。多方面での活躍が目立つスケザネさんですが、本業はゲームのシナリオライターです。これまでさまざまなメディアで数多くの「オススメ本」を紹介してきたスケザネさん、今回は「本業なので」と、いつも以上に本気の選書をしていただきました。


心構えを身につけ、大枠を学び、細部を磨け!

才能もないし、特別な教育を受けてもいないが、現在はある企業の社員として大好きなゲームのシナリオを書いている。無数の幸運がもたらした偶然によるものだが、尽くした人事を挙げれば、数え切れないほどの駄作を積み上げたこと、そして創作術にまつわる書籍を読み漁ったことだった。その中から多くの人にも推奨したい3冊を紹介する。

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複眼の映像
橋本忍=著
文藝春秋

大前提となる創作者としての心得を教えてくれたのは、橋本忍『複眼の映像』。橋本は黒澤明『七人の侍』『生きる』などに携わった名脚本家だ。凄絶な橋本の半生も面白いが、何よりも啓ひらかれたのは、黒澤と橋本が異常なほど下準備を重ね、駄作や没案をこれでもかというほど積み上げるシーンである。実際の映画には描かれない設定や人物造形まで、いくつもの案を出し、緻密に練り上げるのだ。血の滲むような努力と試行錯誤を、愚直に誰よりも続けられることこそプロだと気づけるだろう。
才能がないと嘆く前に、まずは黒澤と橋本の背中を見てほしい。


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荒木飛呂彦の漫画術
荒木飛呂彦=著
集英社

心構えができたら、実際に物語創作のテクニックを学ぶ。そのために、漫画家・荒木飛呂彦による創作の手引き『荒木飛呂彦の漫画術』を強く薦めたい(タイトルは漫画だが、小説や映画志望でも全く問題ない)。創作の基本やお約束がこれでもかというほど詰まっている一冊で、語学でいえば文法書のようなものだ。
物語を構成する主要な要素として「キャラクター」「ストーリー」「世界観」「テーマ」を挙げ、それぞれの創り方や注意点が解説されるのだが、圧倒的な説得力を備えており、実践にも活かしやすい。


場面設定類語辞典
アンジェラ・アッカーマン、ベッカ・パグリッシ=著
滝本杏奈=訳
フィルムアート社

あとはとにかく実践あるのみ。何が何でも最後まで書き上げるのだ。すると、いかに創れないかが身をもって分かるはずだ。才能がないと愕然とするかもしれない。
だが待ってほしい、ここから次なる戦いが始まるのである。問題がどこにあるのか冷静に探ろう。大枠なのか、細部なのか。大枠なら二冊目に戻る。もし細部に欠陥があるなら磨き上げるのだ。
その際には、語学でいう辞書や表現集にあたる、具体的なネタやヒントを集めた本があるといい。それが「類語辞典シリーズ」だ。特に『場面設定類語辞典』、『職業設定類語辞典』を傍らに置いてほしい。自分のアイデアや語彙が平凡なら、とにかく引いて、より良いものが見つかれば儲けものだし、見つからなくても研磨剤に出会えるはずだ。


フィルムアート社から刊行された「物語やキャラクター創作に役立つ書籍」を下記ページにまとめています。映画だけでなくゲーム・小説・マンガなどのジャンルにも応用可能です。脚本の書き方、小説の書き方に悩んでいる方はぜひご一読ください。