〈教師〉になる劇場

演劇的手法による学びとコミュニケーションのデザイン

川島裕子=編著
中島裕昭/渡辺貴裕/高尾隆/鈴木直樹ほか=著
発売日
2017年1月24日
本体価格
2,800円+税
判型
A5判・並製
頁数
272頁
ISBN
978-4-8459-1616-0
Cコード
C0037
刷数
2刷
備考
品切

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学校教育における「関係性」を、豊かなものに編み直していくための、〈演劇×コミュニケーション×教育〉という新しい方法論とその可能性。

21 世紀における多様な関係性と価値観と変化の中で、教師はどのようにそれらを感受し、関わり合いながら新しい価値を生みだしていけるのか? 教師はどのように子ども・若者たちの恊働的な学び合いの場やコミュニティ=「居場所」を学校教育の中につくっていけるのか? そして、教師の誇りと意欲は、どのように育めるのか?

北海道教育大学、愛知教育大学、東京学芸大学、大阪教育大学の四大学共同の取り組み「HATO プロジェクト」の成果をもとに、「演劇的手法によるコミュニケーション教育」の新しい教育の可能性を体現する。教員志望者、教育研究者にとって刺激的な一冊。

目次

はじめに
「関係性」の専門家としての〈教師〉を育てるために(川島裕子)

【第一部】
「演劇的手法によるコミュニケーション教育」とは何か

「教師である」から「なる」へ──〈教師〉を編みなおす場としてのコミュニケーション実践(川島裕子)
〈教師〉になる場としての演劇──コミュニケーション実践のデザイン(川島裕子)
演劇とコミュニケーション(中島裕昭)
演劇的手法と教師教育との結びつき──教師としてのあり方の探究という可能性(渡辺貴裕)

【第二部】
学校教育を切りひらく──「演劇×教育×コミュニケーション」の各視点から

[即興演劇(インプロ)の可能性]
インプロヴィゼーションと学びの関係デザイン(高尾隆)
[評価と行為]
「評価」としてのコミュニケーション──「評価する身体」とは何か(鈴木直樹)
[声とリズム]
「間(ま)」「あわい」のコミュニケーション──能から学ぶ「声」のコミュニケーション(中西紗織)
[イメージと体験]
生活経験から形成されるイメージに基づく音楽表現の視点から(田中龍三)
[社会的文脈と変容]
他者を「なぞり」、境界に立つ──演劇・人類学・社会参加の境界に(石野由香里)

おわりに
コミュニケートする身体としての〈教師〉(川島裕子・芝木邦也)

プロフィール

[著]
川島裕子(かわしま・ゆうこ)
1980年愛知県生まれ。北海道教育大学特任研究員。トロント大学オンタリオ教育研究所博士課程。専攻は演劇教育、学校教育、若者文化研究。論文に「Performing the Other and Becoming Different: Affects of youth and schooling in Japan」(博士論文、2017年)、「授業実践の文脈としての『演劇と教育』の接点」(『演劇教育研究』6号、2015年)など。

中島裕昭(なかじま・ひろあき)
1957年生まれ。東京学芸大学教育学部演劇分野教授。専攻は現代ドイツ演劇、演劇教育、パフォーマンス研究。共著に『ドラマ教育入門』(図書文化社、2010年)、共訳にエリカ・フィッシャー=リヒテ著『パフォーマンスの美学』(論創社、2009年)、論文に「「演劇都市ベルリン」は、どのようにして始まり、いつ終わったか」(尾関幸編『西洋近代の都市と芸術5ベルリン 砂上のメトロポール』所収、2016年)など。

渡辺貴裕(わたなべ・たかひろ)
1977年兵庫県生まれ。東京学芸大学教職大学院准教授。専門は教育方法学。「学びの空間研究会」を主宰し、小中高の現場の先生方と共に、演劇的手法を用いた授業の可能性を実践的に追究してきている。演劇教育・ドラマ教育関連の業績に関して、日本演劇教育連盟より演劇教育賞(2010年)、全国大学国語教育学会より優秀論文賞(2012年)、日本教育方法学会より研究奨励賞(2016年)を受賞。著書として『ドラマと学びの場』(共編著、晩成書房、2014年)、『グローバル化時代の教育評価改革──日本・アジア・欧米を結ぶ』(共著、日本標準、2016年)、『時代を拓いた教師たちⅡ』(共著、日本標準、2009年)など。

高尾 隆(たかお・たかし)
1974年島根県生まれ。東京学芸大学芸術・スポーツ科学系音楽・演劇講座演劇分野准教授。専門は演劇教育、インプロ(即興演劇)、吹奏楽教育。インプロをキース・ジョンストン氏などに師事。学校、劇場、企業、地域などでワークショップをおこなう。主宰するインプログループ「即興実験学校」では俳優として舞台にも立つ。最近は吹奏楽教育にも関心を持つ。指揮法をユージン・M・コーポロン氏に師事。公立中学校吹奏楽部の指導にあたりながら実践と研究を進めている。著書に『インプロ教育──即興演劇は創造性を育てるか?』(フィルムアート社、2006年)、共著書に『インプロする組織』(三省堂、2012年)、『日常を変える!クリエイティヴ・アクション』(フィルムアート社、2006年)など。

鈴木直樹(すずき・なおき)
1971年埼玉県生まれ。東京学芸大学教育学部健康スポーツ科学講座准教授。専攻は体育科教育学。著書に『体育の学びを豊かにする“新しい学習評価”の考え方──学習評価としてのコミュニケーション』(大学教育出版、2008年)、『関係論に立つ体育授業づくり』(大学教育出版、2008年)、共著書に『動きの「感じ」と「気づき」を大切にした体つくり運動の授業づくりシリーズ(体つくり運動、陸上運動、器械運動、表現運動、水泳、保健)』(教育出版、2011‐2014年)、論文に「Changes in the Japanese Games curriculum and the shift toward student-centered learning」(Human Movement Health and Coach Education, 2014)、「体育授業における教師の身体性に関する研究──評価する身体に着目して」(体育・スポーツ哲学研究、第25巻第1号、2003年)など多数。

中西紗織(なかにし・さおり)
津田塾大学英文科、東京藝術大学音楽学部楽理科卒業、同大学院博士後期課程修了。博士(学術)。北海道教育大学教育学部(釧路校)准教授。専門は音楽学、音楽教育学。著書(共著)に、音楽教育史学会編『戦後音楽教育60年』(開成出版、2006年)。論文に「能における『わざ』の習得に関する研究──事例分析からの学習プログラムの開発を通して」(博士論文、2007年)、「能の稽古における指導言語に関する研究──『わざ言語』を手がかりとして」(『北海道教育大学紀要(教育科学編)』第64巻第1号、2013年)、「教員養成課程における能の指導に関する研究──声と身体に焦点をあてた体験学習の意義と可能性」(『全国大学音楽教育学会30年記念誌』研究紀要第26号、2015年)、など。観世流謡・仕舞を観世銕之丞師に師事。

田中龍三(たなか・りゅうぞう)
1952年大阪府生まれ。大阪教育大学教育学部教員養成課程教授。専門は音楽科教育学。共著書に、『音楽科 授業の理論と実践』(あいり出版、2015年)、『改訂版 小学校音楽科の学習指導──生成の原理による授業デザイン』(廣済堂あかつき、2009)、『中等科音楽教育法』(音楽之友社、2009年)、『平成20年中学校教育課程講座 音楽』(ぎょうせい、2008年)、『生成を原理とする21世紀音楽カリキュラム』(東京書籍、2006年)。論文に、「初等音楽科教育法における「子どもの表現力育成」に関する指導──ドラマ教育の手法を活用して」(『大阪教育大学紀要 第Ⅴ部門教科教育』第65巻第1号、2016年)、「音楽科鑑賞授業における文化的側面の指導について──中学校1年生の授業実践から」(『大阪教育大学紀要 第Ⅴ部門教科教育』第55巻第2号、2007年)、「曲種に応じた発声を指導内容とする授業の開発」(日本学校音楽教育実践学会『学校音楽教育研究』第5号、2001年)。

石野由香里(いしの・ゆかり)
早稲田大学平山郁夫ボランティアセンター助教。俳優。専攻は演劇教育・人類学・社会貢献。共著書に「他者を鏡に省察を促すロールプレイの用法」『体験の言語化』早稲田大学平山郁夫記念ボランティアセンター編(成文堂、2016年)、論文に「演劇的手法を用いたボランティア活動の省察と変容的学習に関する研究──アクティブ・ラーニング、サービス・ラーニング等への適用に向けて」(アレックディクソン賞受賞論文/『ボランティア学習研究』第14号、2015年)など。

芝木邦也(しばき・くにや)
1951年東京都生まれ。北海道教育大学教育学部教授。専攻は技術教育。論文に「子どもたちのコミュニケーション実態調査──学校の中で話すということ」(『北海道教育大学紀要 教育科学編』第65巻第2号、2015年)など。