ままならない世界の広がりをとらえる
進化するデザイン論の見取り図
8つの論点と8つの分野、64のキーワードで
複雑化する〈現代〉がみえる、わかる、つながる
誰もがデザインする時代に必携の入門書!
現代の「デザイン」は、気候変動やパンデミック、多様な人々の尊厳、持続可能性など、さまざまな問題を抱える社会に対応すべく、その射程を広げ複雑化しています。デザインはかつてのように製品やメディア、サービスなどの具体的な対象に関する造形的・視覚的な設計にとどまらず、企業の経営や行政的な政策、情報技術から組織運営、顧客体験まで、幅広い課題に対するソリューションをもたらす戦略的な営為として位置づけられるようになっており、それは次々と提案される「××デザイン」といった理論や多岐にわたる社会的実践として現れています。
本書はそうしたデザインをめぐる錯綜した現在の状況を俯瞰し複雑なままにとらえながら、種々のデザイン的思考・手法がどういった望ましい未来を志向しているのかをキーワードを軸に概観していきます。私たちが今いる複雑な世界を理解することにはままならなさが付き纏いますが、その世界が要請する多様な期待やニーズ、関連する多数の主体に向き合うことで、デザインには現状をありうべき望ましい世界へと変えていく力がある──デザイナーだけでなく誰もがそういった世界をデザインしていく第一歩として、今そしてこの先のデザインの広がりをつかむために最適の一冊です。
【本書のポイント】
・第1部理論編は、未来、場所、人間、組織、参加、持続可能性、HCI、デザイナーという8つの論点から、40の「××デザイン」に触れながら現代のデザイン理論の広がりをとらえます。
・第2部実践編は、行政・政策・公共、ポスト工業化の産業、技術哲学、健康・生命、持続可能性、都市・建築、パブリック・プレゼンテーション、アクティビズムという8つの分野で、さまざまなデザイン理論がどのように実装されているのか、64のキーワードを立てながらその展開を解説します。
・デザイン理論の背景には、それを要請するその時代・その社会における世界の理解の仕方=世界観があると考え、歴史のなかでどのように世界観が変遷してきたか、その世界観によってそのときどきのデザインがどのようにデザインされてきたのかを11本のコラムで辿ります。
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◆シリーズ[クリティカル・ワード]
現代社会や文化および芸術に関わるさまざまな領域を、[重要用語]から読み解き学ぶことを目指したコンパクトな入門シリーズです。
基本的かつ重要な事項や人物、思想と理論を網羅的に取り上げ、歴史的な文脈と現在的な論点を整理します。もっと深く理解し、もっと面白く学ぶために必要な基礎知識を養い、自分の力で論じ言葉にしていくためのヒントを読者に提供する新しい入門書です。
目次
はじめに 水野大二郎
第1部 理論編──現代におけるデザイン論の諸相
1 デザインと未来 水野大二郎
2 デザインと場所 水内智英
3 デザインと人間 水内智英
4 デザインと組織 水野大二郎
5 デザインと参加 水内智英
6 デザインと持続可能性 水野大二郎
7 デザインとHCI 水野大二郎
8 デザインとデザイナー 水内智英
第2部 実践編──デザイン理論の実装と展開
1 行政・政策・公共 中山郁英
1 先見的イノベーションガバナンス/2 インタウンデザイナー/3 JAPAN+D/4 公共イノベーションラボ/5 シビックテック/6 修理する権利/7 デジタル庁とDX推進/8 ポリシーデザイナー
2 ポスト工業化の産業 岩嵜博論
1 SFプロトタイピング/2 ポストパンデミックのワークプレイス/3 AIとデザインの民主化/4 サービスデザインと産業/5 デザイン思考/6 サステナビリティと産業/7 デジタルファブリケーション/8 メディエーターとしてのデザイナー
3 技術哲学 七沢智樹・大家慎也・原島大輔
1 テクノダイバーシティ(技術多様性)/2 サイバーフィジカルシステム(CPS)/3 ポストヒューマニズム/4 技術と権力/5 科学技術社会論(STS)/6 デザイン倫理/7 ポスト現象学/8 バリューセンシティブなデザイン(VSD)
4 健康・生命 原島大輔・長谷川愛・七沢智樹
1 ELSI/RRI(倫理的・法的・社会的課題/責任ある研究とイノベーション)/2 DEI(多様性・公平性・包括性)/3 ウェルビーイング/4 非近代的家族/5 インターセクショナリティ/6 バイオファブリケーション/7 ネオ・サイバネティクス/8 モアザンヒューマン
5 持続可能性 水野大二郎
1 多元世界/2 SDGs/3 人新世/4 サーキュラーエコノミー/5 エコモダニズム/6 エコロジカル・デザイン/7 バイオマテリアル/8 トランジションデザインと持続可能性
6 都市・建築 吉本憲生
1 デジタルツイン/2 インスタグラミズム/3 ホモセルラー/4 エリアマネジメント/5 DAO(分散型自律組織)/6 朽ちるインフラ/7 自動設計/8 プレデザイン
7 パブリック・プレゼンテーション 川勝真一・山崎泰寛
1 コンタクト・ゾーン/2 Massive Change/3 ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展/4 Rapid Response Collecting/5 キュラトリアル・ユーフォリア/6 Design for the Other 90%/7 Design and the Elastic Mind/8 フォレンジック・アーキテクチャー
8 アクティビズム 水内智英
1 反消費主義運動/2 脱植民地化デザインと知の再編/3 気候正義/4 プロジェクト中心民主主義/5 テクノエイブリズム/6 トランジション・イニシアチブ/7 市民科学/8 メタデザインの多層性
[コラム]デザインを取り巻く世界観の変遷 水野大二郎・水内智英・山崎泰寛
① 神話の制作
② 科学の台頭
③ 世界の地図化
④ ものづくりの機械化
⑤ 人間の計測
⑥ 女性の建築家とデザイナー
⑦ 成長の限界
⑧ 主体の分散化
⑨ インターネットの世界基盤化
⑩ 複数種の相互依存性
⑪ 未来の先見性
人名索引
事項索引
プロフィール
[編著]
水野大二郎(みずの・だいじろう)
京都工芸繊維大学未来デザイン・工学機構教授。専門はデザインリサーチなど。ロイヤルカレッジオブアートにて博士後期課程修了、博士号(ファッションデザイン)取得。帰国後、京都大学デザインスクール、慶應義塾大学SFCなどで教鞭をとったのち現職。著書に『サーキュラーデザイン──持続可能な社会をつくる製品・サービス・ビジネス』(共著、学芸出版社、2022年)など多数。
水内智英(みずうち・ともひで)
京都工芸繊維大学未来デザイン・工学機構准教授。専門はメタデザイン、社会変革のためのデザインなど、複雑な社会技術的課題に対峙するためのデザインのあり方を追求している。武蔵野美術大学基礎デザイン学科、ロンドン大学ゴールドスミス校大学院MA Design Futuresで学ぶ。京都工芸繊維大学で博士号を取得。訳書にアルトゥーロ・エスコバル『多元世界へ向けたデザイン』(共監訳、ビー・エヌ・エヌ、2024年)など。基礎デザイン学会理事。
山崎泰寛(やまさき・やすひろ)
京都工芸繊維大学未来デザイン・工学機構教授、博士(学術)。専門は近代建築史、建築メディア論。横浜国立大学教育学部卒業、京都大学大学院教育学研究科修了、京都工芸繊維大学大学院博士後期課程修了。滋賀県立大学准教授を経て現職。著書に『リアル・アノニマスデザイン』(共編著、学芸出版社、2013年)、『クリティカル・ワード 現代建築』(共編著、フィルムアート社、2021年)、『分析 建築コンペ・プロポーザル』(共編著、学芸出版社、2025年)など。
[著](50音順)
岩嵜博論(いわさき・ひろのり)
武蔵野美術大学教授/大学院大学至善館特任教授、博士(経営科学)。ストラテジックデザインを専門として研究・教育活動に従事しながら、ストラテジックデザイナーとしての実務を行っている。イリノイ工科大学Institute of Design修士課程修了、京都大学経営管理大学院博士後期課程修了。著書に『デザインとビジネス──創造性を仕事に活かすためのブックガイド』(日経BP 日本経済新聞出版、2023年)、『機会発見──生活者起点で市場をつくる』(英治出版、2016年)など。
大家慎也(おおいえ・しんや)
久留米工業高等専門学校助教。専門は技術哲学。科学技術の民主化、および科学技術との関係における人間の自律を研究テーマとしている。最近の論文に、“From Relational Freedom to Autonomy: An Expansion of Verbeek’s Postphenomenology,” Human Studies, 46, 423–442 (2023). https://doi.org/10.1007/s10746-023-09681-7がある。
川勝真一(かわかつ・しんいち)
けんちくセンターCoAKディレクター、京都工芸繊維大学特任研究員/京都芸術大学教授。専門は建築展の歴史やキュレーションなど。長年、建築展覧会キュレーション、市民参加型ワークショップの企画・運営などに携わる。著書に『建築思想図鑑』(編著、学芸出版社、2023年)、『建築が生まれるところ──Architecture Pass Kyoto Document Book』(盆地edition、2022年)など。
中山郁英(なかやま・いくえい)
立命館大学デザイン・アート学部准教授、博士(学術)。研究テーマは「行政組織によるデザインの実践」。京都工芸繊維大学大学院デザイン学専攻博士後期課程修了。民間企業や東京大学i.schoolでの勤務を経て滋賀県長浜市に帰郷、自治体と協働した事業等に携わる。2025年より立命館大学に着任。著書に『行政×デザイン実践ガイド──官民連携に向けた協働のデザイン入門』(ビー・エヌ・エヌ、2024年)がある。
七沢智樹(ななさわ・ともき)
Technel合同会社代表/山梨県立大学特任教授。企業での技術開発の経験をいかし技術哲学を研究している。日本の技術哲学者が集う「技哲研」や、亜熱帯ジャングルで狩猟採集的滞在を実践する「Iriomote JUNGLE CLUB」、意識の究極問題を問う「意識研究財団」などを運営。共訳書にマーク・クーケルバーク『技術哲学講義』(丸善出版、2023年)。WIRED Japanにて「技術哲学入門」連載中。国際技術哲学会SPT2023運営委員。
長谷川愛(はせがわ・あい)
生命科学やテクノロジー、社会倫理を横断的に扱うアーティスト/スペキュラティヴ・デザイナー。生殖、環境問題、身体拡張などをテーマに、科学的リサーチとフィクションを組み合わせた作品を制作し、未来社会における人間と生物、技術の関係を問い直している。作品は国内外の美術館や国際展、フェスティバルなどで発表され、アートと科学の接点を探る作品を制作している。
原島大輔(はらしま・だいすけ)
立教大学現代心理学部映像身体学科助教。専門は基礎情報学、表象文化論。著書にCybernetics for the 21st Century Vol. 1(共著、Hanart Press、2024年)、『メディア論の冒険者たち』(共著、東京大学出版会、2023年)、『未来社会と「意味」の境界』(共著、勁草書房、2023年)など。訳書にユク・ホイ『ポストヨーロッパ』(岩波書店、2025年)など。
吉本憲生(よしもと・のりお)
博士(工学)。総合コンサルティングファーム在籍。データ戦略構築やAI活用推進、統計・機械学習を基盤とした分析設計に従事。専門はデータ&AI活用、都市計画・モビリティ。著書に『建築をあたらしくする言葉』(共著、TOTO出版、2024年)、『公園が主役のまちづくり』(共著、工作舎、2022年)、『都市科学事典』(共著、春風社、2021年)など。