ためし読み

『対立・葛藤類語辞典 下巻』

対立・葛藤という黄金の糸がストーリーを動かす

対立・葛藤には独自の大きな力があり、プロットとアークの両方に影響をおよぼしながら、この2つを織り合わせる黄金の糸となり、ストーリー全体を貫く。たとえば、対立・葛藤がなければ、キャラクターに自分の平凡な日常を捨てさせ、新たな世界へ向かわせる誘発的な事件は起きない。そして、キャラクターが次から次へと容赦なく逆境や難題に見舞われ、打ちのめされない限り、どん底に落ちて何もかもを失う瞬間は訪れないだろう。どん底に落ちたあと、キャラクターは心の闇夜の中で、対立・葛藤という炎の中をくぐり抜けた自分の旅路を振り返り、自分は絶対に変わるのだと自らを叱咤激励する。それからクライマックス、すなわち摩擦の頂点が訪れ、キャラクターが内的葛藤をいかにうまく克服できたかによって、外的な衝突における勝敗が決まる。

対立・葛藤の爪痕は、プロットやアーク全体に刻まれているだけでなく、それを超えて、いたるところに残っている。意味のある対立や課題はストーリーを向上させる。ここからは、その方法をいくつか見ていこう。

対立・葛藤はキャラクターの成長を助ける

本の1ページ目で、キャラクターが目標を達成できるはずがない。なぜなら、ストーリーが始まっていきなりクライマックスが訪れても、キャラクターは惨めに失敗するだろうからだ。あらゆる痛みを引き起こす対立・葛藤は、キャラクターに修練場を提供する。キャラクターは小さな危険や弱い敵に直面しながら、より大きく恐ろしい問題に立ち向かうのに必要な知識やスキルを身につけ、自分を知り、反発力を高めていく。

キャラクターはどの対決にも勝てるわけではなく、負けや失敗もその成長に欠かせない。つまずきは事態を複雑にし、無力さや不安、失望といった不快な感情を生みやすい。このような感情に襲われるのは嫌なもので、キャラクターはそうした気持ちになるのを避けたがる。そこで、何がいけなかったのかを理解しようと、自分の強みと弱みを厳しい目で見つめ、判断を誤らせた信念や欲求、恐れ、偏見があったのではないかと分析する。何が自分をためらわせるのかを特定できたら、今後は同じ過ちを繰り返さないように自分を変えようとする。

自分を成長させたいと願うこの気持ちは、対立・葛藤が拡大し、危険度が増し、失敗の余地がなくなってきた場合に、ひときわ重要になる。キャラクターは最善の自分を見つけることでしか、目の前の課題や逆境を巧みには切り抜けられない。自分の成長を阻む恐れや欠点をかなぐり捨て、自分の特性やスキル、知識を活かすように変わると、成功体験を積み重ねるようになり、心の中にあるもっと大きな障壁を乗り越えて成長していく。いかなる内的な対立・葛藤でも、キャラクターがそれに折り合いをつけることができたとき、キャラクターはなるべき自分になり、どんな問題に遭遇しても対処できるだけの強さを発揮する。

以上が、変化のアークをたどるキャラクターの典型的な成長過程なのだが、対立・葛藤は逆に暗い道へとキャラクターを導くこともある。自分を変える機会は何度もあったのに、キャラクターは過去の痛み、偏見、機能不全状態の思考を払拭できずにいる。そこへ、恐れにとりつかれ、失敗が積み重なると、苦境を乗り越えるために必要な自分からますます遠ざかる。そうなると、キャラクターの態度もものの見方もどんどんとネガティブになり、自暴自棄になって、自分の道徳的な線引きが揺らいで消えていくだろう。

対立・葛藤は自尊心を高める(または引き裂く)

積極果敢に困難な状況を突破しようとするキャラクターは、何かが起きるのを傍観者のように待つのではなく、自ら判断を下し、力強く前進しているという確かな手ごたえに支えられるはずだ。たとえ不利な競争を強いられ、敗北や挫折を味わっても、鏡に映る自分の姿を見て、自分は正しいことをやっているのだと確信する。とても克服できそうにない数々の問題に取り組むには、勇気とへこたれない根性が必要だ。簡単に勝てそうにないなら、なおさらである。場合によっては、闘いの場に姿を現すだけでも、自分に価値があることを他人や自分に証明できることもある。

その一方で、対立・葛藤はキャラクターに自分の適性や能力を疑わせる種を蒔くこともある。キャラクターがリスクの高い状況で失敗を何度も犯していると、負の感情がくすぶってくる。失敗続きのせいで、周囲の人々が自分を信用しなくなっているように思える場合は特にだ。難題が次から次へと襲いかかり、精神的に疲れ果て、自分への疑いを払拭できなくなると、あきらめの境地にいたる可能性は高くなる。へこたれずに歯を食いしばるのはやめて、いつもの情けない自分に戻って心に壁を作り、もっと芯の強い人間になろうとしたこれまでの努力が水の泡となってしまうかもしれない。

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対立・葛藤類語辞典 下巻

アンジェラ・アッカーマン/ベッカ・パグリッシ=著
新田享子=訳
発売日 : 2023年6月24日
2,000+税
A5判・並製 | 352頁 | 978-4-8459-2303-8
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