おんなじものが、違ってみえる

江戸と漫画とボーイズラブと

紗久楽さわ=著
山本文子=聞き手
発売日
2025年9月25日
予価
1,800円+税
判型
四六判・並製
頁数
256頁(仮)
ISBN
978-4-8459-2502-5
Cコード
0095

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見落とされた過去を今とつなげたい

江戸を舞台に漫画を描き続けてきた紗久楽さわが、CLAMPや手塚治虫に憧れた幼少期から、実在する浮世絵師や歌舞伎役者を描いた作品を経て、江戸BLの傑作『百と卍』へと至る軌跡を振り返る。全編語り下ろしによるインタビュー本。

2025年に完結した『百と卍』が、『このBLがやばい!2018年度版』で1位を獲得しただけでなく、BL作品として初めて「文化庁メディア芸術祭」のマンガ部門で優秀賞を受賞するなど、国内外で高く評価されている漫画家・紗久楽さわ。全編語り下ろしとなる本書では、愛してやまない江戸文化や歌舞伎、幼少期や思春期に影響を受けた作家や作品、同人活動時代から商業漫画家へと至る歩みを振り返っていきます。

実在する浮世絵師を描いたコミックスデビュー作『当世浮世絵類考 猫舌ごころも恋のうち』、初の長期連載となった幕末の歌舞伎俳優たちの青春劇『かぶき伊左』、猫と江戸がテーマの短編集『あだうち 江戸猫文庫』、畠中恵の同名小説のコミカライズ『まんまこと』など、これまで手掛けた全てのコミックスを振り返りながら、それらの作品の経験から生み出された代表作『百と卍』に込めた思いをたっぷりと語っています。また、コミックス化されていない連作短編集『碧空切符』や、『百と卍』より前に描かれたBL短編についても触れ、『百と卍』へと至る紗久楽の軌跡を丁寧に追います。

幼少期から強い影響を受け続けているという手塚治虫や、月代のBLを描くきっかけとなった三谷幸喜脚本の『新選組!』、江戸文化への入口であり、紗久楽のあこがれである杉浦日向子といった作家や作品について触れるだけではなく、BLというジャンルやセクシュアルマイノリティへの思い、江戸時代をはじめ時代劇を今描くことの意味についても明かしています。加えて、『百と卍』後の展望についても語っています。

インタビュアーはBLに造詣が深いライターの山本文子が担当。山本の質問により、漫画家・紗久楽の思考や姿勢に深く触れられる内容となっています。装画は紗久楽の描き下ろしです。


目次(仮)

プロローグ 続いていく日々――『百と卍』
第1章 江戸と歌舞伎に魅せられて――幼少期/小学校/中学校/高校
第2章 舞台から漫画へ――大学/『当世浮世絵類考 猫舌ごころも恋のうち』
第3章 史実に導かれて――『かぶき伊左』/『碧空切符』/特典冊子と学校教材漫画/装画と『葉桜と魔笛』
第4章 あるものとないもの――『あだうち 江戸猫文庫』/『まんまこと』/手塚トリビュートと「蜜蜂王国婚約記」/BL漫画
第5章 同じだけど違う、違うけど同じ――『百と卍』
エピローグ 大切なものの外へ――これまでとこれから

あとがき
コミックス・単行本解題

プロフィール

[著]
紗久楽さわ(サクラ・サワ)
漫画家。⼤阪府⽣まれ。京都造形芸術⼤学(現・京都芸術⼤学)舞台芸術学科卒業。個人サイトで発表していた江⼾の浮世絵師たちを描く漫画で注⽬を集め、2009年、同作をまとめた『江⼾浮世絵師漫画 猫⾆ごころも恋のうち』で単⾏本デビュー。2010年、『Daria』掲載の「三⽂⽂⼠の恋」にて商業雑誌デビューを飾る。幕末の歌舞伎役者を描いた『かぶき伊左』や、畠中恵による時代⼩説のコミカライズ作品『まんまこと』など主に江⼾時代を舞台とする漫画を執筆。2015年から2025年にかけて『on BLUE』にて連載された『百と卍』は、「第22回⽂化庁メディア芸術祭」の漫画部⾨で優秀賞に輝いたほか、『このBLがやばい!2018年度版』の1位になるなど評価されている。

[聞き手]
山本文子(ヤマモト・フミコ)
ライター、編集者。漫画情報誌『ぱふ』、小説情報誌『かつくら』の編集者を経て独立。よしながふみのインタビュー本『仕事でも、仕事じゃなくても』や、ヤマシタトモコのインタビュー本『ほんとうのことは誰にも言いたくない』で聞き手を務める。共著に『やっぱりボーイズラブが好き』がある。これまでに紗久楽さわへの取材や対談の構成を多数行っている。